こんにちは。ゆう先生です。
中学校で国語の先生をしています。教育にかかわることを発信していきます。
Microsoft Educatorの認定を取るときに勉強した「21世紀型教育」について連載記事にしています。
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・学習指導要領の「知識」と「深い学び」について理解が深まる
知識構築を達成する4ステップ
(出展:21CLD Learning Activity Rubrics 小柳和喜雄研究室 日本マイクロソフト)
いきなり結論です。
①知識構築を要求していること
②学習活動の主な目的が知識構築であること
③知識を新たな文脈に適用すること
④学習の目的が学際的(教科横断的)であること
これらが達成されているほど、より高度な知識構築が授業で起こっていると判断されます。
そもそも知識構築って何なの?
「知識構築」という言葉は私たちには全くなじみのない言葉です。
まずはこれを理解しないことには先に進みません。
「知識」という言葉を私たちは「物事について知っていること」や「その人がどのぐらい物事を知っているか」という文脈で使います。
・「暗記」して知っている情報
・図書館で調べて得た情報
・インターネットで検索して得た情報
・調査やインタビューで得た情報
これらが「知識」として扱われます。
「知識構築」では「知っていること」は前提として扱われます。
「知識」としてもっている情報を解釈したり、分析したりといった活動を通して、「新しいものの理解や、アイデアを生み出すこと」に活用すること。
ざっくりというと「知識構築」は情報から深く読み取ることを要求していると言えます。
「暗記型はダメだ!」とか「詰め込み教育は間違っている!」といったことがセンセーショナルに取り上げられがちですが、
本質を理解している人たちは「圧倒的な知識」がなければ、物事を理解したり、新たなものを作り上げたりするのは不可能だと知っています。
「ただ覚えている」のは意味がないよ、そういうのは調べれば誰でも手に入れられるものだよ、それをどう活用するかだよ
個々の部分にフォーカスしているだけで、「暗記していること」や「知っていること」をむやみに否定しているわけではないことに注意する必要があるわけですね。
①知識構築を要求している
「批判的思考力」を使う学習活動になっていますか?ということです。
「解釈・分析・統合・評価」の4つの活動を「批判的思考力」と考えています。
・解釈 文字通りとらえる以上のことを予想したりイメージしたり推察すること
・分析 全体の中の各部分がどんな影響を与えているか、お互いの関係性はどうかを確認すること
・統合 2つ以上の関係性を調査すること。因果関係、相関関係を比較したり対ししたりすること。
・評価 データや物事、アイデアについて、「質・確実性・重要性」を判断すること。
文字に起こすとなんだかよくわからない感じですね……。具体的に落とし込んでみます。
・解釈
「羅生門」の下人がにきびを気にしている様子を読んだ。
→にきびができるということは年齢が若い。若い人も職を失って路頭に迷うくらい世の中が混とんとしている
「にきび」という文字から読み取れる以上のことを自分の持っている知識を組み合わせて予想している。
・分析
「月夜の浜辺」を読んで、中原中也について調べて分かったことを作品の読解に生かす。
→中原中也が息子を亡くしているので、この作品は死んだ息子を思い出して作られたのではないかと考える。
中原中也と作品を個別に分析し、二つの関係性を確認している。
・統合
→2つの作品を比較し、太宰治が「走れメロス」で加筆した部分の意味を考える。
2つ以上の作品がどのような関係性にあるか比較している。
・評価
論説文を読み、根拠の妥当性を考える。
→筆者が事例を1つしか用いていないので、筆者の主張を支える根拠として弱いと判断する。
文章を読んで、データの質と確実性を判断している。
ものすごく長くなってしまいました。
普段デザインする授業に当てはめると、
「単元の目標」に設定する部分が「知識構築」に該当する
こんなイメージで良いのではないかと思います。
②活動の主な目的が知識構築かどうか
授業の中で上述したような「知識構築」の活動が目的になっているかどうか。
これが2つめの要素です。
目的になっているかどうかを判断する基準は
「最も多くの時間をかけているかどうか」
「最も多くの労力を費やしているかどうか」
「教師が成績をつけるときに注目する部分であるかどうか」
の3つです。
中学校ではまさに「単元の目標」のイメージとぴったりです。
・文章を読んで、細部を整理する
・部分ごとについて解釈を深めたり、理解を深めたりする
・単元の最後に時間をかけて単元の目標にかかる課題に取り組む
だいたい1時間の授業をまるまる使ったり、場合によっては課題に2時間かけたりしますから、
「時間と労力を割いて、最も大切な部分に取り組む」
「出来上がった成果物を評価する」
というのは国語の授業ととても親和性が高い要素ですね。
③知識を新しい文脈に適用しているか
すでに知っていることを新しい課題に取り組むときに活用させましょうという感じです。
ただし、公式や定理を当てはめるだけの活動ではダメだそうです。
論説文には「導入、根拠、理由付け、結論」の4要素がある
→新たに読む論説文を読むときにその知識を当てはめて考える。
→さらに新たに読んだ文章の説得力があるかどうかを理由付けの解釈から評価する
こんな感じで1つの単元で実現するというよりは、複数の単元にまたがって実現するイメージでしょうか。
「公式や定理を当てはめるだけではダメ」という条件で難易度がかなり上がっているように感じます。
これを毎回クリアできるような単元計画を立てられているか……
自分としてはかなり微妙な感じです(笑)
学習指導要領でいうところの「深い学び」に大きくかかわってくる部分ですね。
「既習事項を活用」というのがどの研修でも言われることですが、
まさに既習事項を「活用」する課題設定です。
④学際的(教科横断的)な学習活動か
・理科の授業で、実験をしてデータを得る
・データの妥当性や、データからわかることをまとめる
・レポートや文章など何らかの形で発信する
→理科的な評価 実験をしてデータを得る過程、得られたデータの分析の仕方
国語的な評価 レポートや文章の出来栄え、書き方など
こんな感じで、複数の教科にまたがる内容を同時に教えているかどうか
さらに「複数の教科的目線で評価しているかどうか」
この2つが達成されると「学際的(教科横断的)な学習活動」
が達成できます。
「複数の教科にまたがるような学習活動」
はどんな教科でも日常的に行っていると思いますが、
「複数の教科の目線での評価」
となると、今の日本の教科担任制ではなかなか難しいところです。
それこそ大学のゼミでの学びに近い活動です。
そう考えると、「評価については中学校では積極的に達成しようとしなくても構わない」
こんなことが言えそうですね。
「深い学び」と絡めて考えよう
21世紀型教育の6つの要素の2つめ、「Knowledge construction」について解説しました。
前回の記事でも書きましたが、このテキストは「発達段階ごとに細かく分けたテキスト」ではないので、
発達段階ごとに分かれている学習指導要領と絡めて考えるのがよさそうです。
テキストに載っていたルーブリック
これのコード5、最後の形、最も完成度の高い形は
なかなか中学校では達成できなさそうです。
そこを目指すよりも、コード3かコード4を達成できるように単元をデザインする
こっちのほうが中学校にあてはまるイメージではないでしょうか。
日本の学習指導要領での「知識・技能」の部分ではなく、
「思考・判断・表現」の部分に食い込むのが「知識構築」ではないかと思います。
前回も書きましたが
ルーブリックでわかりやすく明示されていると目指す地点がはっきりして
授業の案を考えるのも格段に楽になる
そんな感想でした。
次回は6つの要素の3つめについて解説していきたいと思います。
最後まで読んでくれてありがとうございました!
みんなで楽しく先生をやろう!