教室づくり、みなさんはどうしていますか?
私が初めて担任を受け持ったときには
とにかくにぎやかで明るい教室にしたい!
と思い、教室づくりをとにかく頑張っていました。
教師として10年以上働いた今は、教室づくりに「ユニバーサルデザイン」を取り入れることを意識しています。
今回は、若手の先生や「ユニバーサルデザインって何?」といった先生に
「教室づくりに取り入れたいユニバーサルデザイン5選」をお伝えします。
私が実際に取り組んだことで「簡単にできた!」「効果があった!」と実感したものをご紹介しますので、ぜひ役立ててみてください。
- 「ユニバーサルデザイン」とは?
- 教室づくりに取り入れたいユニバーサルデザイン①「前面に何も貼らない」
- 教室づくりに取り入れたいユニバーサルデザイン②「時間割・時程表」
- 教室づくりに取り入れたいユニバーサルデザイン③「予定表・連絡」
- 教室づくりに取り入れたいユニバーサルデザイン④「机・イスの位置マーク」
- 教室づくりに取り入れたいユニバーサルデザイン⑤「机・イスの足にテニスボール」
- まとめ・誰もが過ごしやすい教室に
「ユニバーサルデザイン」とは?
そもそもユニバーサルデザインって?
「年齢や能力、状況などにかかわらず、デザインの最初から、できるだけ多くの人が利用可能にすること」
「すべての人のためのデザイン」「みんなが使いやすいデザイン」
1985年、アメリカのノースカロライナ州ユニバーサルデザインセンターのロナルド・メイスによって提唱された考え方です。
似た言葉に「バリアフリー」というものがあります。
「バリア=障害・障壁」を「フリー=取り除く」という考え方です。
ユニバーサルデザインは「そもそも『バリアがない』状態でデザインしよう!」という考え方です。
牛乳パックの切り欠き
シャンプーボトルのきざみ
ユニバーサルデザインは社会の中に広く浸透しています。
「みんなで住みやすく快適な世の中を作っていこう」という考え方です。
教室にユニバーサルデザイン?
公立学校には様々な特性をもった生徒が在籍しています。
・にぎやかな環境が好きな生徒
・落ち着いた環境が好きな生徒
・みんなでワイワイするのが好きな生徒
・一人でいるのが好きな生徒
生徒たちみんなが満足する教室はなかなか作れませんが、
生徒たちみんなが過ごしやすい教室には頑張れば近づけます。
教室にユニバーサルデザインを取り入れることは「みんなが過ごしやすい教室」に近づく手法の一つです。
教室づくりに取り入れたいユニバーサルデザイン①「前面に何も貼らない」
まず取り組んだのは「教室の前面に何も貼らない」ことです。
生徒が集中力を継続させやすくなり、授業への取り組み方が変化します。
上の画像で説明すると、学校の先生がやりがちなことは
・学級目標を黒板の上に大きく貼る
・掲示物を黒板の左右の空きスペースにたくさん貼る
・教材教具を黒板に貼ったままにする
・提出物の連絡などをホワイトボードに書いて、教卓の生徒に見える部分に貼る
・本棚や文房具置き場などを教室の前方に配置する
・マスコットキャラのイラストを貼ったり、ぬいぐるみなどを置いたりする
といったことではないかと思います。
すみません! 全部私がやっていたことです!(反省)
集中や注意を続けにくい生徒にとって黒板周りの掲示物や装飾は集中を妨げる天敵です。
学級目標を生徒がカラフルでにぎやかに作ったり、
とにかく「色」をふんだんに使いがちです。
「色」が気が散る原因になり、注意力や集中力をより一層低下させます。
本棚や文房具置き場などを前面に配置するのも集中力と注意力を低下させます。
授業に関係のないものが目に入ることで気が散ってしまうのです。
「教室にスペースがない!」というときは、横向きに置くだけでもいいです。
または、シンプルな布などで隠しておくのも効果的です。
授業に関係のないものが直接目に入るのを防ぐだけで、集中を続けやすくなります。
ちなみに「時間割・時程表」や、小学校によくある「声の大きさ表」は
教室の前面に貼ると効果が高まります。
前面はシンプルにスッキリさせつつ、必要なものだけを貼るといったレイアウトが理想的だと思います。
教室づくりに取り入れたいユニバーサルデザイン②「時間割・時程表」
学校では朝のホームルームから帰りのホームルームまで、時程が細かく決まっています。
1時間目は何時から何時までか、休み時間は何分間か、給食は何分間か。
毎日のスケジュールをわかりやすい大きさでわかりやすいところに貼っておきましょう。
1日のスケジュールや、この後何があるのか、見通しが持てないと気持ちが落ち着かないといった特性を持つ生徒もいます。
見通しを持つことで落ち着くことができる生徒は、時程表があることで安心して学校生活を送ることができます。
また、中学校では毎週の時間割が固定で決まっているところが多いでしょう。
固定の時間割がある学校では、大きくわかりやすい時間割表を貼っておくこともとても効果的です。
小学校では固定の時間割ではない学校も増えてきていますから、更新しやすい大きめの掲示板に毎週貼りつけるのがいいと思います。
時程表と時間割だけは教室の前面に掲示してもよい数少ない掲示物だと思います。
見通しを持ったりスケジュールを管理したりすることが苦手な特性を持つ生徒たちにとって
絶対になくてはならない掲示物だからです。
時間管理が苦手、見通しを持てないと落ち着かない、という生徒以外の生徒にとっても、
時程表と時間割があると不便になるということはないですよね。
教室づくりに取り入れたいユニバーサルデザイン③「予定表・連絡」
学校では毎日様々な行事が目白押しです。
学校行事、学年行事、各種検定など、本当に多岐にわたる行事が開催されます。
誰がどの行事に関わっているのかいちいち把握しきれないこともあります。
だから、自分で自分の予定を管理させる必要があります。
そもそもそれも学校での学びの一つですよね。
教室には必ず「連絡用の黒板」が備え付けられています。
その日の予定と次の日の予定は必ず書き込み、誰もが見通しを立てられるようにしておくとよいと思います。
学級委員や日直など、毎日生徒に書き直してもらえるように仕組み化するとより良いです。
学級担任が不在になっても、生徒自身で予定を共有して学校生活を円滑に進めることができるように育っていきます。
連絡黒板を書かせるときに一つ注意するのは「チョークの色」です。
黒板は濃い緑色か、黒色であることがほとんどだと思います。
ここに書かせるときに「ピンク色」や「緑色」「青色」のチョークを使わせると、
見えにくくなったり読みにくくなったりして、気を取られるようになります。
黒板に書かせるときのチョークの色は「白色」か「黄色」だけを使わせるようにしましょう。
備え付けるチョークの色を限定するだけで簡単に仕組み化できます。
教室づくりに取り入れたいユニバーサルデザイン④「机・イスの位置マーク」
教室の机・イスを揃えるために、床にマークをしましょう。
机の前足か、後ろ足、どれか1つで良いので、置くべき位置にマジックで点を書くだけです。
点ではなくカギカッコのようなものでマーキングしても構いません。
日本の教室のシステムでは、机とイスは前後左右の位置が揃っている方が圧倒的に良いです。
ただし、空間認知が苦手な生徒は机とイスを前後左右を見て揃えるというのがとても苦手です。
そうでない生徒も目線や基準にする目標物によって微妙にずれた位置に机・イスを置きがちです。
机・イスを前後に移動させて清掃させる学校もあると思います。
清掃の最後に机・イスを揃えるのもマーキングがあればとても時短になります。
デメリットは、マジックで床にマーキングをすると、簡単に消せないというところです。
4月に準備をしようと思って新しい教室に入ったとき、床に前の学級のマーキングが残っていることがあります。
人数などが同じであればいいのですが、微妙に違うこともあります。
以前のマーキングを再利用できればいいのですが、再利用できなければきれいに消すか、マーキングを使わないかの2択になってしまいます。
また、写真のような木製の床の学校では、そもそもマジックでマーキングするのはご法度です。
このデメリットを解消するのに、シールやビニールテープを床に貼るという方法もあります。
これもシールのあとが残ってしまったり、テープの糊が残ってしまったりといったデメリットがあります。
どちらにせよ、年度末の大掃除では教室のマーキングはきちんと落とす、というのを徹底しましょう。
教室づくりに取り入れたいユニバーサルデザイン⑤「机・イスの足にテニスボール」
日本の学校の机とイスって移動させる前提で使っています。
グループ活動、給食、清掃。
移動させることが前提なのに移動させるとき、シンプルにうるさいです。
35人、40人が一斉に動かしたら、何も聞こえなくなります。
難聴で補聴器をつけていたり、そもそも音に敏感な性質を持っていたりすると、
机とイスの音は想像以上にストレスになります。
私たちですら「うるさい!」と感じるのですから想像に難くありません。
しかし、家庭用の家具に使うフェルトシートだと、学校のハードな使い方では1カ月ともちません。
そこでとても役に立つのは「机・イスの足に硬式テニスボールをつける」ことです。
以前一度お世話になったプロテニス協会のサイトです。
生まれながら重度の難聴があり、補聴器をつけている生徒が
「机・イスの音と補聴器の相性が悪く、とてもストレスを感じている」
この問題を解消するためにテニスボールを譲っていただきました。
結論、ものすごく快適になりました。移動させたときの不快な音がなくなります。
また、移動させるための力もほとんど必要なくなりました。
家庭でも「家具の移動を楽にするフェルトシート」が売っていますよね。
デメリットはずっと使っているとテニスボールが教室の汚れを拾って想像以上に汚くなることです。
1か月もすると、テニスボールは真っ黒でホコリまみれです。
冬は生徒が着てくる防寒着からでる糸くずやホコリでさらに汚さが増します。
掃除が面倒になるというデメリットを覆い隠して余りあるメリットがありますので、
テニスボール装着をぜひ検討してみてください。
まとめ・誰もが過ごしやすい教室に
「すべての人のためのデザイン」「みんなが使いやすいデザイン」
という理念です。
「配慮」というとそのために特別な何かをしなければならないという感覚になりますが、
ユニバーサルデザインは初めからみんなが使いやすい状態を目指すので、
特別な何かをするのではありません。
ユニバーサルデザインの考え方を持っていると、教室づくりだけでなく授業でも生きてくる場面が多いです。
今日の記事が少しでも皆さんの役に立ったらうれしいです。
今後も先生の仕事に関わること、自分が仕事をするうえで考えていること、
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最後まで読んでくれてありがとうございました!